日産自動車が移行した指名委員会等設置会社とは何か?

投稿者: KEN COACH 投稿日:

 日産自動車株式会社は、2019年6月21日に「指名委員会等設置会社への移行に関するお知らせ」をリリースした。

 この「指名委員会等設置会社」とはなんだろうか?

 「指名委員会等」とは、株式会社の機関の一つである。

 株式会社の機関といえば、その筆頭は株主総会だろう。このほかに取締役も会社の機関の一つであり、会社法では第326条第1項で「株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。」と規定している。

 同条第2項では、「株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等を置くことができる。」と、取締役のほかに会社に置くことのできる機関が列挙されている。

 さて「指名委員会等」とは指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3種類の委員会を指す。会社法第400条1項に「指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の各委員会(以下この条、次条及び第931条第3項第23号ロにおいて単に「各委員会」という。)は、委員三人以上で組織する。」と規定されている。

 さらに同条3項に「各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければならない。」とあるとおり、委員会を構成する取締役の過半数が社外取締役でなければならない。

 さて、「社外取締役」とは最近よく聞くが、いったいどういう取締役なのだろう。言葉からすると「会社の外にいる取締役」という感じがするので、会社をメンバーシップ的共同体として捉えている日本人の会社観からするとやや違和感があるようにも感じられる。

 もちろん会社法できちんと定義されており、会社法第2条15号で規定されている。条文を以下に掲出する。

 株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。

  イ 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の会社法363条第1項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

  ロ その就任の前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

  ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。

  ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。

  ホ 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。

 とある。

 縷々羅列されているので読むだけでも大変だが、以上の各号のいずれにも該当する取締役が社外取締役ということになる。ざっくりいえば「過去10年間のうちその株式会社及びその親子会社・兄弟会社の役員や従業員であったことがなく、会社の重要なポストに就いている人の近親者でもない」取締役が「社外取締役」だということになる。つまり、歴とした取締役であるもので、かつ会社との関係が薄いと思われるものが社外取締役であるということだ。

 2015年のコーポレート・ガバナンス・コードにより、上場会社においては社外取締役を2名以上選任することになっており、そうしない場合にはその理由を説明しなければならないことになった。ちなみにこのコーポレート・ガバナンス・コードは2018年6月1日に改訂されており、東証のホームページから閲覧することができる。

 基本原則の第一として「株主の権利・平等性の確保」が掲げられている。

上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行う とともに、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を 行うべきである。
また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。
少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利 行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面 があることから、十分に配慮を行うべきである。

https://www.jpx.co.jp/news/1020/nlsgeu000000xbfx-att/20180601.pdf

 日産自動車株式会社もコーポレート・ガバナンス上問題があり株主の権利が蔑ろにされるような状況があったということで、ガバナンスを強化するために指名委員会等を設置し、会社に対してしがらみがなく中立的な立場から企業経営を監督することのできる社外取締役を数多く抱えることにしたというわけだ。

 ちなみに委員会は取締役会の中に設置される機関なので、取締役会を置いていない会社には置けない。公開会社は必ず取締役会を置くことになっているが、株式に譲渡制限のついている非公開会社では取締役会を置かない場合もある。その場合には取締役会ではなく個々の取締役が会社の機関ということになる。取締役がいない会社というものは、会社法326条1項の規定からあり得ないことがわかる。

 わざわざ東京証券取引所がこのようなコーポレート・ガバナンス・コードを公表して株主の権利の確保を呼びかけるのには、日本経済に特有の事情1)例えば「なぜ日本では間接金融が支配的で、金融資産も株式ではなく現預金が大部分を占めているのか?」といったような問題である。がある。そのあたりについては、追々別の記事で書いていきたい。

References   [ + ]

1. 例えば「なぜ日本では間接金融が支配的で、金融資産も株式ではなく現預金が大部分を占めているのか?」といったような問題である。
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