森信茂樹「デジタル経済と税」日本経済新聞出版社

投稿者: KEN COACH 投稿日:

 タイトルの通り、GAFAをはじめとするIT企業のビジネスと、それに対する国家の税制の問題を概観することができる、非常にコンパクトにまとめられた良書だ。

 GAFAだけではなく、たとえばUBERのような「シェアリング・エコノミー」も税法上のみならず様々な課題を抱えている。

 一例を挙げると、シェアリング・エコノミーで働く役務の提供者は被用者なのか自営業者なのかの区分が曖昧だ。最近ではUBER Eatsのドライバーたちが労働組合を結成するような動きも見られるが、UBERの(利用者にとっての)安さは、現段階では彼らのような役務提供者の不安定な地位や負担によって成り立っている側面も否定できない。

 UBERがその安いサービスで旧来の出前業者タクシー会社を駆逐してしまったあとに、UBERのドライバーや配達員たちが労働条件の悪さを理由に次々に廃業し、それらのサービスの提供者がいなくなってしまったとしたら、経済全体の便益を大きく損なうことになってしまうだろう。シェアリングエコノミーやギグエコノミーはそうした危険性を孕んでいる。

 GAFAの租税回避もいまは税務当局がそれに目を光らせるようになってしまったので、後発の企業が同じようなスキームで節税し、手元に残った金を事業に投下していくということは極めて難しいだろう。一時は仮想通貨に同様の役割が期待されていたものの、こちらも各国政府の監視は非常に厳しい。日本においては個人に対して仮想通貨の譲渡益が雑所得に算入されるし、Facebookの仮想通貨「リブラ」は猛反発に遭い米国議会で袋叩きに遭っている。雑所得に区分されると他の所得との損益通算もできないし繰越控除もない。なのに予定納税にはかかるのである。

 なお、GAFAが実際に採用している節税スキームに関しては同著に詳しいので一読をお勧めする。もっとも、知ったところで同様の節税策はもはや取れないのだが。我々国民にできることといえば、せいぜい払った税金がきちんと使われるように選挙に行き、公共の施設を使い倒すということになるのであろう。けだし、死と税金よりも確実なものは世の中に存在しないのであるから。

 とはいえ巨大化したGAFAの恩恵を人々が受けていることも事実である。私はAppleのMacBookとiPhoneでGoogleドライブにアクセスし、Google検索を駆使して記事を書きながらAmazonで売られる本の紹介をする。YouTubeにアップされている著者の講演動画を観ることもあるだろう。本自体もAmazonで買うことも多い。和書は街の書店で買うことが多いが、洋書で店頭にないものはやはりAmazonで買ってしまう。

 だがやはりGAFAにしてもタックスヘイブンや租税回避、さらにシェアリング・エコノミーの労働法上の問題に至るまで、この領域の話は現代の経済の在り方そのものに関わるものであり、どこから手をつけていいかわからないということにもなりかねない。そこへ行くと同著は租税やタックスヘイブンに関する問題だけでなく、ギグエコノミーの台頭による雇用の問題やベーシックインカムなど、いまの経済システムの問題に関してコンパクトに概観できる良著である。ぜひ一読をお勧めしたい。

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