報酬上乗せ

 日産の西川社長が、取締役の報酬を数千万円上乗せして受け取っていたことが2019年9月5日付の日本経済新聞で報じられています。コーポレート・ガバナンス上のチェック体制に不備があったためでしょう。

これを受けて、ケン・コーチのコーポレート・ガバナンス研究所でもガバナンスの問題について日産を取り上げつつ解説をしました。

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みなさんこんにちは。
ケン・コーチのコーポレート・ガバナンス研究所2019年9月5日付第30号をお届け致します。

日産、取締役報酬数千万円上乗せ?

さて本日はですね、2019年9月5日付の日本経済新聞の記事でございますが、
「日産西川社長報酬数千万円上乗せか 一部返納の意向」と。

コーポレート・ガバナンスの問題で揺れている日産ですけども、今回明らかになったこととして株価連動報酬の算定基準日を変更することによって報酬を4,700万円多く受け取っていたということで、社長としてはその算定であるとか報酬のことに関しては他の人に任せていたので気づかなかったということですけれども。

日産はカルロスゴーン氏の問題が出てから、青山キャピタルリサーチラボでも紹介しましたけれども、日産のホームページからのももちろん閲覧いただくことができますのでぜひご覧いただければと思うわけですけれども。

指名委員会等設置会社とは何か?

まあ一応解説ですね、指名委員会等設置会社とは何なのかと、いうことですけれども、
「指名委員会等」というのは三つの委員会を指すんですね。
指名委員会、監査委員会、それから報酬委員会と。
指名委員会というのは取締役を指名する役割を担っており、監査委員会では今回のような内部規定に違反している場合にそれを調べる・監査するという役割を担うと。
報酬委員会というのは報酬を決定する。第三者的な立場から取締役の働きを評価して、で報酬を決めると。
この三つの委員会を設置して、ガバナンスを強化する体制に移行した。
それをメンバーを選任して行ったのが2019年6月21日ということなんですが。

イギリスでは1992年から

ポッドキャストでも歴史について少し1970年代から解説しておりますけれども、
もともとですね、この3つの委員会を設置するというのはイギリスにおいては1992年に設置することが提案されていたものなんですね。もともとはだから1992年。
少し内容を振り返ってみるとですね、1970年代には監査委員会を設けなければいけないと。ヨーロッパにおいても会社は監査機関を持った二層制がいいんだということが言われて。
1980年代には少し揺り戻しというか、株主至上主義が台頭してきてその弊害と言うものがあらわになってきた。
1990年代に入って、今言った1992年イギリスのキャドバリー報告書。1997年にはビジネスラウンドテーブルの「効果的な企業統治の原則」というものが出て。で2002年にはそれもエンロン事件を受けて改訂されるわけですね。
その後さらに2008年にリーマンショックが起こってその際にもやはりガバナンス、過度のリスクを取ってあまりにも大きなリスクをとったことに対する取締役の責任というか、それに対して経営上の歯止めをかけることができなかったのかと言うことが問題になったわけですけれども。
そこで少しコーポレートガバナンスにおける、主たるメインテーマというか、若干そこに変更があるわけですね。
2002年以前のエンロン事件以前にはいかにして取締役の悪意や不正を防ぐのか。悪意ではなく過失のようなものであったとしても、まぁミステイクをいかにして防ぐか。不正はもちろんのことミス、勘違いだったり間違いであったりというようなことも含めて、どのようにして取締役が正しく機能するのかということがメインテーマだったわけですけれども。

2008年以降のガバナンスのテーマ

2008年以降はそれに加えて、リーマンショックが非常に高度な金融商品、金融工学に基づく複雑な商品設計だったりリスク管理だったりと。まあそういったものがリーマンショックの大きな原因なわけですから、それはコーポレートガバナンスの文脈でいうと、会社が行う取引が複雑化し高度化しすぎている中で、いかに専門的な知識をベースにしながら取締役が経営の意思決定を行っていくのかと、そういうことに徐々にシフトしてきているわけです。でももちろん最近はAIであったりあるいは個人情報の保護とか、GDPRとかですね、金融のものも含めて規制であったり。各取引の専門性というものが非常に高くなってきているわけです。

日本は20年遅れている

ですので正直、取締役が悪意を働いたり不正を働いたりミスったりすると、そういうことを防止しなければならないというのはアメリカやイギリスにおいては2002年以前の話だったわけですね。1992年にはもう3つの委員会を設置して、独立社外取締役も選任してやらなければならないということであったわけですけれども。2008年以降はもう社外取締役がいたりするのは当たり前で、いかに専門的な知識を経営に導入していくかということがまた一つの大きなテーマとして台頭してきているわけなんですが。
そういった観点から言うと日本のコーポレートガバナンスというのは、まだまだイギリスやアメリカに比べると20年近い遅れがあるのではないかなと思うわけです。

日産も実際に不正が行われていたのは、体制に不備があったのは以前のことですけれども、今後は指名委員会等設置会社にも移行したわけですし、きちんと内部の監査体制だったりチェック体制を整えていくということで。日産だけでなく、その他の日本企業においてもそういったチェック体制というものをどんどん導入していかなければならないと。
アメリカは既に先行しているわけですからそういった会社と渡り合っていくためには、日本企業のガバナンスを強化して、きちんと会社が運営されるように仕組みづくりを体制構築をしていかなければならないのかなと思います。

ポッドキャスト・YouTube見てね

今回はメモ書き程度にしか紹介しておりませんけれども、1970年代から80年代90年代、この時代の出来事に関してはこれ以前のポッドキャストとYouTubeで紹介しておりますのでそちらのほうもご覧いただければと。あと指名委員会等設置会社についても青山キャピタルリサーチラボに解説記事を書いておりますのでご覧いただければと思います。

参考文献としては今回は日産のプレスリリースと、日本経済新聞社の新聞記事。それからボブ・トリッカー先生の「コーポレートガバナンス」。これらを参考にしていただければと思います。

それでは2019年9月5日付第30号はこれにて以上でございます。お聞き下さいましてありがとうございました。

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