物価上昇が続いている。マスメディアでも普通にインフレやスタグフレーションという言葉が使われるようになってきた。私は昨年からスタグフレーションに関する警鐘を鳴らしていたが、物流の逼迫や疫病関連のゴタゴタと相まり想定していた以上に物価が上がってきている。

 同時に昨年の後半以降、金融市場では景気のいい話も連発されていた。アップルが時価総額3兆ドルを超えたとか、イーロン・マスク氏の個人資産がトヨタ自動車の時価総額を上回ったなどという話だ。

 一方で、人手不足の問題も続いている。アメリカでは港湾労働者が失業保険の給付を受けるために失業の状態を維持するので、港に人がおらず物流が滞っている。さらにドライバー不足も引き続き深刻な状態が続いている。日本でもここ最近かなりの金額を払わないとまともな食事にありつけなくなっているが、より深刻なのはサービスだ。某出前注文サイト(無料記事なので名前は伏せる)で注文した際に、勝手に置き配になっておりしばらく気づかないという事例が増えたり、挨拶もしない配達員が増えたりした。

 こういう現象の本質についてしばらく考えていたのだが、最近「これこそがインフレの本質ではないか」と思うようになった。つまり、単に物価が上昇するに留まらず、マネーそのものが購買力を失って、財やサービスと交換できなくなりつつあるということだ。人手不足の本質は、貨幣で労働力が買えなくなりつつあるためだというふうに理解したほうがいいのではないか。もはや仕事にやりがいがあるだのいい上司に恵まれるだのという話とは完全に別次元の問題に突入しており、旧来の労働市場を見る見方はまったく機能しない。

 物価上昇が名目的なインフレーションだとすれば、実質的、本質的なインフレーションは「マネーの死」だ。NFTで無名の一般人が書いたイラストに何百万円という値段が付いたり、アメリカ株の銘柄が天文学的な時価総額を記録したりしているのは、マネーという価値基準がボロボロになっていることの証左なのではないか。FIREなどといって、マネーを蓄えて労働や社会からリタイヤする人が増えているのも、マネーはもはや価値保存手段として無益だからばらまかれているだけなのではないか。

 中国やロシアは、ゴールドの備蓄を増やしている。これはブルームバーグが報じていることだが、中国人民銀行は2018年12月から2019年9月にかけて100トンもの金を購入している(https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-10-07/china-s-gold-buying-spree-tops-100-tons-amid-prolonged-trade-war)。日本国内でも、金地金価格がここ5年で50%近く上昇している(https://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/m-gold.php)。中国やロシアはアメリカの主導する金融システムから距離を置きつつあるが、それは有料版の中で書いていく。

 この物価高の最中に、カザフスタンで暴動が起こったことも不可思議だ。カザフスタンは世界最大のウラン生産国であり、ロシアと中国のちょうど中間地点に位置する。暴動の報を受けてウラン価格が上昇しているが、石炭・石油・天然ガスに続いてウランが値上がりすることによって資源高インフレが加速していく。こんなに都合良く暴動が起こる背景はどうなっているのか。公開記事では書けない・・・。

 いずれにしても、旧来の金融システムやそのシステムを支えていた神話が次々に崩壊していく最中に我々は生きている。教育やマスコミが、極めて偏った世界観に基づいて我々を洗脳してきたため、我々はそれを世界全体の終わりであるかのように考えてしまいがちだが、世界には別の世界観で生きている人たちがいる。その世界の情報は、これまでは上のほうの連中によって我々には与えられなかったが、いまやインターネット経由で探すことができる。そしておそらく我々の活路はそこに見出すことができる。